(のをよこに うまひきむけよ ほととぎす)
広々とした那須野の情景を詠み、ほととぎすの鋭い声のイメージが夏の野の風情を巧に表現しています。
(なつやまに あしだをおがむ かどでかな)
光明寺の役の行者像の健脚にあやかって、これからの道中の無事を祈った句です。
(かさねとは やえなでしこの ななるべし)
黒羽入りする日、後を慕ってついてきた「かさね」という少女の純情な心を詠んでいます。
(まぐさおふ ひとをしおりの なつのかな)
「秣を背負う農夫を道しるべとしてやって来ましたよ」というあいさつの句で草深い那須の情景を詠んだ句です。
(きょうもまた あさひをおがむ いしのうえ)
余瀬で催された歌仙の中の句で、「石の上に立って今日も朝日を拝む行者の姿」を詠んだものです。
(ゆくはるや とりなきうおの めはなみだ)
余瀬で催された歌仙の中の句で、「石の上に立って今日も朝日を拝む行者の姿」を詠んだものです。
(やまもにわも うごきいるるや なつざしき)
ダイナミックなタッチで、黒羽の山河と浄法寺家の庭園の美しさを絵画的に表した句です。
(たやむぎや なかにもなつの ほととぎす)
今眺める風景は、秋風の吹く白河の風景と違って風情はないが、夏のほととぎすだけが風情を感じさせてくれる。浄法寺家に滞在した四月七日に詠んだ句。
(つるなくや そのこえにばしょう やれぬべし)
(絵の中で)鳴いている鶴よ。その声によって、(同じ絵の中の)芭蕉の葉も破り散ってしまうのでしょう。浄法寺邸において鶴の絵をほめる「讃」として詠んだ句。
(きつつきも いおはやぶらず なつこだち)
尊敬する仏頂和尚の山居跡を訪ねたときの句。「和尚の徳の前にきつつきさえも敬意を払っている」というユーモラスな視点が光ります。